不機嫌なアルバトロス
『俺のこと、言えなくない?』
答えようとしない櫻田花音にさらに詰め寄る。
『っ、違いますっ。中堀さんのとは、全然違うっ』
漸く小さく叫んだあいつに、俺は否定された。
『へぇ?どんなふうに?』
『あれはっ、無理やりっだもんっ』
言った後で、櫻田花音の目から涙が零れた。
女の涙は嫌いだ。
嘘ばっかりだから。
『嫌がってる風にも見えなかったけど?』
あーあ。
こいつは全然悪くないんだけどな。
俺はなんでこんなにこいつを責めてるんだろう?
顔を近づけると、一瞬弱弱しく視線を彷徨わせた櫻田花音だったが、すぐにきっと俺を睨みつけた。
『ど、どーだって、いいじゃないですかっ。中堀さんには、カンケーありませんっ』
こんな状態でも俺に噛み付くこいつは本当に一体何なんだ。
『そそそれにっ、私の役だって!妹なんだしっ、恋人居る設定なんだしっ、迷惑別にかけてないじゃないですかっ』
ふーん。
そうやって、自分のミスを正当化するわけですか。
『…確かにね』
確かに俺は、あんたに俺を好きになるなって言ったよ。
あんたは妹役だからな。
だけど忘れてないか?
『…でも、俺言ったよね?』
今は契約期間だってこと。
『二週間は、俺のものだって』
勝手に身体使わないでくれる?