不機嫌なアルバトロス
『あと10日は他の奴のモノになっちゃ駄目だよ』
そう言って、ぎゅっと目を瞑った櫻田花音の唇を塞ぐ。
息を吸うのを許さずに、深く入り込む。
甘い吐息は必要ないから。
俺を、見て。
今だけは、俺を。
そこまできてやっと俺は気付く。
どーいうわけか、俺は、崇にあんたを盗られるのが嫌みたいだ。
いや、崇に限らず他の人間に、盗られるのが腹立つんだ。とりあえず今は。
多分、契約期間が終わればきっとこんな感情はなくなるんだろう。
だから、このキスにも、深い意味はないよ?
だけど、こんなキスは、したこともないけど。
求められたわけでもなく、
好かれているわけでもないのに。
ましてや病気の女を相手に。
自分のおもちゃを奪われて、取り返したくてしたキスなんか、今まで一度もない。
ほんと、俺はどうしたんだ、一体。