不機嫌なアルバトロス


『あと10日は他の奴のモノになっちゃ駄目だよ』




そう言って、ぎゅっと目を瞑った櫻田花音の唇を塞ぐ。



息を吸うのを許さずに、深く入り込む。



甘い吐息は必要ないから。


俺を、見て。


今だけは、俺を。




そこまできてやっと俺は気付く。



どーいうわけか、俺は、崇にあんたを盗られるのが嫌みたいだ。


いや、崇に限らず他の人間に、盗られるのが腹立つんだ。とりあえず今は。



多分、契約期間が終わればきっとこんな感情はなくなるんだろう。



だから、このキスにも、深い意味はないよ?



だけど、こんなキスは、したこともないけど。


求められたわけでもなく、


好かれているわけでもないのに。


ましてや病気の女を相手に。



自分のおもちゃを奪われて、取り返したくてしたキスなんか、今まで一度もない。




ほんと、俺はどうしたんだ、一体。
< 362 / 477 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop