不機嫌なアルバトロス
阿呆鳥の癇癪ータイムリミットまであと3日ー
「お、かえんの?」
朝、4時。
クラブの裏口から出ようとした所を、燈真に声を掛けられた。
「ん」
振り返って短く返事すると、燈真がおかしそうに笑う。
「なぁ、やっぱりなんか怒ってんの?」
燈真とは反対に、俺は無表情だ。
「…別に」
「俺は忠告してやっただけだよ?花音ちゃんのこと。」
「その名前、出さないでくれる?」
「おーこわ」
そう言うと、燈真は両手を上げておどけてみせる。
イラつく。
俺は眉間に思いっきり皺を寄せてそれを睨んでから、外に出た。
「さむ…」
まだ真っ暗な空。
自分の吐いた息が白く染まる。
俺は身を縮ませ、家路へと向かう。
雪の降ったあの夜も、そういえばこれくらいの寒さだった。
また、雪が降るのだろうか。
『ちょっと入れ込み過ぎじゃない?』
ついこないだ燈真に言われた言葉が、頭の中に反芻されて舌打ちする。
「わかってるよ」
これ以上踏み越えたら、自分は自分じゃなくなる気がしている。