不機嫌なアルバトロス
自宅に戻ると、真っ暗な部屋に灯りを点ける。
エアコンのスイッチを入れると、着ていたジャケットを放ってソファに掛けた。
それから冷蔵庫に入っているミネラルウォーターを取り出し、俺はソファに座る。
この一連の動作は、いつも通りだ。
だけど。
「…やっぱり、この部屋に入れるべきじゃなかったな。」
俺は自分のテリトリーに他人を入れることが大の苦手だ。
だけど、最近、他に致し方なかったという理由で二度程、他人を入れてしまった。
それが、櫻田花音だ。
そのせいで、この部屋中にあれの記憶が付いてしまった。
そのせいか、俺は家に帰ってからも、あいつを忘れることが出来ない。
―自分のミスだと思った。
病み上がりのあいつに頼んだ俺が間違いだった。
いや、そもそも馬鹿で阿呆な奴だから、いつ頼んでも同じことだったのかもしれないけど。
まさか、雪降る中、中央公園まで歩いてくるとは思わなかった。
さらに、高熱まで出している状態で。
その上、鞄さえ、ないなんて。
呆れて物も言えない。
正真正銘、馬鹿で阿呆で間抜けな奴だ。