不機嫌なアルバトロス
ヴーヴー
鳴り出した携帯の音に我に返る。
どうも、ここ最近、ぼんやりすることが増えてしまった。
部屋全体に光が射し込んでいることで、太陽が高い位置に移動したのだと知る。
ふと視界の隅に入った時計に小さく驚いた。
―もう、こんな時間だったのか。
まだはっきりしない頭で、そういえば携帯が鳴っていたなと思い出し、手に取った。
が。
その表示を見て、またソファに放り投げる。
着信の相手は葉月。
今は面倒の相手をしている余裕はなかった。
俺はもう何度目かの無意識の溜め息を吐き、片手で頭を抱える。
『ちょっと入れ込み過ぎじゃない?』
燈真の言葉も、まだ繰り返されている。
あいつを追いかけた時、俺もそれに気付いた。
『花音!』
その名前と。
あの後ろ姿で。
自分自身どうしたのかもわからずに、身体が勝手に動いていた。
なんで、追いかけたのか。
理由も知らずに手を掴んだのに。
どうして、あいつは泣いてたのか。
そっちの方が気になって。
その答えが、また。
『あ、、、あなたがっ……欲しいんです…』
あまりに突拍子もなさ過ぎて。
なぁ、駄目なんだ。
あんただけは。
他の女と同じにならないで。
俺の、外だけを見て、判断しないで。
そう願うから。
支離滅裂に思えるあんたの言い訳を、俺は信じることにするね?