不機嫌なアルバトロス
だけど。
俺も。
『な、中堀さんこそっ、どうしてこんなところにっいるんですかぁ?!』
答えられなかった。
今も、答えられない。
なんで、あんたを追いかけて、あそこまで行ったのか。
色々と曖昧なままに、櫻田花音が走り去って。
夜クラブに行くと、燈真が俺を待っていた。
『今日、花音ちゃんに会ったよ、俺の店で』
薄らと笑みを浮かべながら燈真は俺にそう言った。
珍しく崇がカウンターに居なかった。
『―そう』
あの馬鹿。と思いながらも、無関心さを装って相槌を打つと、燈真が真顔になる。
『あの子、お前のこと、好きだよ』
心臓が、止まるかと思った。
『…なんで』
かろうじて訊き返すと、燈真は一瞬目を伏せて―
『勘、かな』
もう一度俺を見た。
『…ふーん。それで?』
燈真が言わんとしていることは、この時点で薄々気付いている。
『お前も、ちょっと入れ込み過ぎじゃない?』
答えない俺に構わず燈真は続ける。
『実名も、教えてるしさ』
自覚はあった。
最初から、計算外だった。
相手を舐めてかかっていた。
櫻田花音相手に、俺はいくつもミスを重ねている。