不機嫌なアルバトロス
電車を降りて、会社までの道のりを歩きながら、中堀さんと初めて出逢った日のことを思い出した。
二週間前のあの日も、金曜日だった。
違うのは、寒さと、風の強さ。
あの日から私は、曲がり角を曲がる際、向こうから来る人を確認するようになった。
「寒…」
ぐるぐるに巻いたマフラーに顔を埋めながら、呟くと息が白く空気を染める。
時間は無情にも過ぎていってしまう。
この二週間で、私にとって良かったこと、は。
他でもない、中堀さんと出逢えたこと、だ。
悪かったことも、中堀さんと出逢ったことだ。
街を歩けば、彼の姿を探してしまう。
でも、神出鬼没の彼は私の会いたい時には居ない。
自分の来たい時にふらりと来て、
隠れようと思えば、上手に隠れてしまう。
―馬鹿みたい。
少しの期待を今日もまた潰されて、ぽっかりとできた虚無感を抱えつつ、会社の自動ドアをくぐった。