不機嫌なアルバトロス
再び、沈黙が車内を支配する。
私はもう、居た堪れない。
何か、会話、会話…
考えながら、ずっと頭に引っかかっていることがある。
どうせ、最後なら。
ひとつだけ、訊きたいこと。
「あ、のっ!」
「何?」
やばい。
緊張度がマックスだ。
だけど―
「さ、さっき!言ってたこと、、、なんですけどっ」
訊きたい。
「さっきっていつ?ってか…そんなに大声じゃなくても聞こえるよ。」
ちらっと横目で私を見て、五月蝿そうに顔をしかめる中堀さん。
しまった。
だけど、今の私には、ボリュームまで気を遣う余裕はないのです。
「か、、風邪のっ…時の…こと、、ですっけど…」
自分で言いながら、顔が、かかかっと熱くなった。
中堀さんは何も言わずに、続く言葉を待っているようだ。
「ま、前の…き、キス…は、、キスじゃないって、、言ってました、けど…、あの時、、したキスは、、キスの内に入りますか?」
上手くは言えてない。
それは自覚している。
だけど褒めたい。
よくやった。
我ながら、ナイス度胸だと思う。
けど。
「………」
沈黙が痛いです。
どういう反応が返ってくるかは未知数だった。
だけどどうしても訊きたかった。
『消毒』と言ってされたキスは。
あれは、キスだとカウントしていいかどうか。
キスだとしたら…なんでされたのか。