不機嫌なアルバトロス

再び、沈黙が車内を支配する。


私はもう、居た堪れない。


何か、会話、会話…



考えながら、ずっと頭に引っかかっていることがある。





どうせ、最後なら。


ひとつだけ、訊きたいこと。




「あ、のっ!」




「何?」




やばい。


緊張度がマックスだ。


だけど―




「さ、さっき!言ってたこと、、、なんですけどっ」




訊きたい。




「さっきっていつ?ってか…そんなに大声じゃなくても聞こえるよ。」





ちらっと横目で私を見て、五月蝿そうに顔をしかめる中堀さん。




しまった。



だけど、今の私には、ボリュームまで気を遣う余裕はないのです。



「か、、風邪のっ…時の…こと、、ですっけど…」




自分で言いながら、顔が、かかかっと熱くなった。



中堀さんは何も言わずに、続く言葉を待っているようだ。





「ま、前の…き、キス…は、、キスじゃないって、、言ってました、けど…、あの時、、したキスは、、キスの内に入りますか?」




上手くは言えてない。


それは自覚している。


だけど褒めたい。


よくやった。


我ながら、ナイス度胸だと思う。




けど。



「………」



沈黙が痛いです。



どういう反応が返ってくるかは未知数だった。



だけどどうしても訊きたかった。



『消毒』と言ってされたキスは。



あれは、キスだとカウントしていいかどうか。


キスだとしたら…なんでされたのか。






< 419 / 477 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop