不機嫌なアルバトロス
飛べない鳥
「おーい」
「おいって」
「おまえだよ、お・ま・え!」
「おい!!!!」
バン、と叩かれたデスクの音に、私は驚いて周囲を見回した。
「週の頭からそんな調子じゃ、困るんだがね!」
あれ、私の机に中年の太い、結婚指輪をはめた手がある。
その主を辿ると、今にも血管が切れそうなほどに怒っている課長に行き当たった。
「あ。。。課長…」
「あ、じゃない!!!さっきから呼んでるだろうが!!!」
ビリビリする程大きな声で、課長は怒鳴った。
「…すみません」
私よりも周囲の人々の方が縮こまっている。
「ったく。今日中にこれ、終わらせてくれよ!じゃないと帰れないからな!」
そう言ってどさっと置かれた書類の山。
「あ、、はい。」
私は小さく頷いて、ぼんやりとそれを見つめた。
「…その様子じゃいつ終わるかわからんな。」
課長はやれやれというように首を振って、自分の席に戻って行く。
「ちょっと…花音…大丈夫?」
こっそりと隣の憲子が訊ねるが、目を合わせる事無く頷いてみせるだけに止(とど)める。