不機嫌なアルバトロス
燈真は私の声なんかお構いなしに、足早に去っていってしまう。
そんなの友達じゃない。
友達なんかじゃ、ない。。
もう、居ない人への復讐の為に、生きる、なんて。
そんな哀しいこと、ない。
それが生きる理由、なんて。
人を傷つけることで、自分が救われることなんて、ひとつもない筈なのに。
誰かを傷つければ、自分も傷つくのに。
「そんなんじゃ―…」
今更涙を我慢しても遅いのに、私は唇を噛み締める。
「中堀さんが…かわいそう…」
その甲斐なく、涙はばらばらと零れた。
嘘を吐く度に、別れる度に、彼は一体何を思っていたんだろう。
負の連鎖は、彼をがんじがらめにしてしまっていないだろうか。
―『言わないで』
今なら。
今、あの時に戻れるなら。
その意味を、理解することができたのに。
抱き締めてあげることができたのに。