不機嫌なアルバトロス
夜明けの、空
「っとに…何かと思ったぜ」
アパートの階段の下、バイクで駆けつけてくれたタカは少しだけ呆れたように笑った。
「ごめん、なさい…」
だって非常事態だったんだもん、と心の中で言い訳しつつも、一応謝った。
電話口でテンパる私をタカは懸命になだめ、とりあえず大まかな話を聞いてくれた。
「…アオの、居場所が知りたいってこと、だけど…正直、俺にもはっきりはわからねぇよ。」
停車したバイクに寄りかかりながら、タカはそう言って、白い息を吐き出す。
「いいです…行きそうな場所さえ、教えてもらえれば…」
タカの話によれば、中堀さんが引っ越したのが、日曜。クラブに少し顔を出し泊まって別れたのは今日らしい。
行き先は一切言わなかったらしいけれど。
もしかしたら、まだこの街に居るかもしれない。
淡い期待が、募る。
「会って、どうするの?」
伏し目がちに落とされた言葉は、ずっと自問していることでもある。
外の空気は、ひたすら、冷たい。
「……ちゃんと、伝えたい。」
言えなかった、気持ちを。