不機嫌なアルバトロス
駅について、待ち合わせ場所の柱に背中を預けると、大勢の行き交う人々が目に入る。
「あ、ここって…」
いつかの朝に、駅近のパーキングに呼び出されたことを思い出す。
あの時は、緊張の余り、ここから動き出すことができなかった。
中堀さんが迎えに来たとわかったときの恐怖といったらない。
そんなに前の話ではないのだけれど、ちょっと懐かしい位の気持ちになるから不思議だ。
っていうか…、中堀さん、本当に来るかな。
段々心配になってきた。
約束の時間まではまだ早い位だけど、こうやって待たされて待ち人が来なかったってことも、よくある。
こ、来なかったら、どうしよう…
まさか、あれで、居なくなっちゃったり…しないよね…
思わず自分の心臓辺りに手を当てる。
その時。
「おい」
掛けられた声に、一瞬思考が止まる。
「何、あんた、ここ嫌な思い出でもあるわけ?いつも死にそうな顔してんのな。」
私は信じられないものでも見るかのように、恐る恐る中堀さんを見上げる。
「き、来た…」
金髪の、中堀さん。
本当に、来た。
「はあ?」
私の思考回路を知らない中堀さんは、思い切り眉を寄せて首を傾げた。