不機嫌なアルバトロス
「何、それ。」
歩いている人たちが、チラチラと中堀さんのことを振り返る。
そうりゃそうだ。
ただでさえ、長身で。
かっこよすぎる顔立ちに。
隠れることのない、金髪。
どこぞのモデルか芸能人かって感じだろう。
しかもちょっと今日の服装が、いつも見ない感じの。
ゆるゆるスタイルも大好きな私だけど。
グレイのシャツに黒のシャギーニット、チャコールグレイのデザインパンツにスエードチャッカーブーツっていう。
目立つ。
似合いすぎてて、目立ちすぎる。
「さみぃから、早く行こう。そこに車停めてあるから。」
別段、何も気にしていない中堀さんは、自然に私の手を取って、歩き出す。
手、手、手、繋いでるっ。
生、の手。
いや、普通なんだけど。
すごい、緊張する。
「あ、あのあのあの…」
私の戸惑いも虚しく、中堀さんはこちらを見ない。
仕方なく、手から伝わる温度だけを心の支えにして、付いて行くと、道路にハザードを出して停めてある車に近づく中堀さん。
「あれ…」
車、違う。
色はやっぱり黒だけど。
なんで変えたの。
変える必要あったの?
しかも、目立つ。
これなら、多分、なんとなくだけど、駐車禁止取られ無さそう。
「どーぞ」
中堀さんはスマートな動作で、私に助手席を勧めてくれるけど。
前の車でさえぴかぴかしてたのに、更にこんなキラキラした車に乗れるかっ!
たじろぐ私に、中堀さんはくすりと笑う。
「一人で乗れないの?」
「え、いや、そういうわけじゃ…」
「じゃ、俺が乗せてあげる」
「え!?」
あろうことか、中堀さんは立ち尽くす私をひょいと抱えた。