不機嫌なアルバトロス
私の名前を呼ばないで。
びゅう、と吹く木枯らし。
臙脂色のマフラーが飛ばされないように左手で掴み、右手でおろした髪を押さえた。
すっかり寒くなったこの頃。
スクランブル交差点を行き交う無数の人々が、沢山居ることを感謝するようになる。
夏は暑苦しくて嫌だが、冬はなんとなくそこだけ暖かいような気がするからだ。
こんなこと思うのは、私だけかな。
気を取り直して私は会社に急ぐ。
横断歩道を渡り切り、工事中の為に狭くなっている歩道を通り抜け、角を曲がる。
「うわっ!」
え?うわ?
私がはっとしたのと同時に。
ドン!バサバサッ
身体に衝撃。