不機嫌なアルバトロス



「あの…帰ります」


着替えを済ませてリビングに行くと、彼は優雅に珈琲を飲んで新聞を読んでいた。

自分の家で普通にテーブルに座って珈琲を飲んでいるだけで、ここまで絵になるんだから、ほんと素材の良い人間って何処までもずるい。


「送ろうか?」


スマートなそのお誘いに、これまで何人の女(ひと)が引っかかってきたのだろう。


「…結構です」


私は謹んでお断り致します。


「そ?ま、ここは比較的駅に近いし、わかりやすいと思うから、平気かな。とりあえず連絡先は教えといてね?詳細は追って連絡するから」


そう言って彼はスマホを取り出す。


私は携帯です。パカパカするやつ。


なんか、ここだけでも負けてる気がするってどーいうこと?

別にパカパカケータイ悪くないし、彼は何も言ってこないけど。

< 79 / 477 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop