不機嫌なアルバトロス
「あの…帰ります」
着替えを済ませてリビングに行くと、彼は優雅に珈琲を飲んで新聞を読んでいた。
自分の家で普通にテーブルに座って珈琲を飲んでいるだけで、ここまで絵になるんだから、ほんと素材の良い人間って何処までもずるい。
「送ろうか?」
スマートなそのお誘いに、これまで何人の女(ひと)が引っかかってきたのだろう。
「…結構です」
私は謹んでお断り致します。
「そ?ま、ここは比較的駅に近いし、わかりやすいと思うから、平気かな。とりあえず連絡先は教えといてね?詳細は追って連絡するから」
そう言って彼はスマホを取り出す。
私は携帯です。パカパカするやつ。
なんか、ここだけでも負けてる気がするってどーいうこと?
別にパカパカケータイ悪くないし、彼は何も言ってこないけど。