不機嫌なアルバトロス
彼は私から携帯を受け取り、手早く操作する。


「じゃ、連絡先入れといたから、よろしく」


終始ゴキゲンな様子の彼は私のバッグを持って、玄関まで送ってくれた。


「…お世話になりました」


一応、それは事実なので、バッグを受け取りながら、私は頭を下げた。


「いえいえ、こちらこそ」


それも本当にそうなのだが、頷くのを堪え、私は玄関を出た。


「どこだ、ここは。」


言いながら、結構良いマンションだなと思った。


あちこち彷徨い、やっとのことでエレベーターホールを探し当てて初めてここが11階だったということに気づく。


乗り込んで腕時計に目をやった。


時刻は昼を過ぎた所だ。


「…くっ」


よく、わかんないけど。


涙が、出た。
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