海風【完】
「あたしはね、
あなたのそういうところが好きなの。
自分のことを良く見せようとか、
他人を立てようとか陥れようとか
そんなこと考えもしないような…
そういう、罪のないところが。」
僕は本当にばかだから、
彼女の言葉が難しくて
理解できないときがたまにある。
だから僕は決まってこう言う。
「僕にはよくわかんないけど、
君がそれでいいなら僕もそれでいい」
我ながら、無責任な言葉だと思う。
ただ、僕には理解ができないし、
理解したところで
どうしようもないことなんだと思う。
「…そうだね。
あなたは、あたしを肯定してくれる。
あなただけは、あたしを否定しない。」
彼女は俯き、ボソボソと小声で続けた。