海風【完】








「あたしは、雲のような存在で、


 あなたの光を
 一人占めしようとしてるの。


 誰にも、届かないように。」






「…う、うん……」






「あたしは、ホントのアタシを
 お家に閉じ込めてるの。

 誰にも見られないように、


 光が届かないように。」






「…うん」






「でも、ダメだった。

 カーテンの隙間から溢れる光までは、
 あたしは防げなかったから、


 彼女は太陽の輝きに
 手を伸ばしてしまったの」







「……手を伸ばしちゃ、いけないの?」





この言葉に、彼女は

切ないような、愛しいような、



複雑な表情を見せた。










< 8 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop