海風【完】
「まぶしいんだよね。
あなたには、自由で居てほしいのに
あたしはその光を求めてしまうから」
僕は彼女の手を握る。
「求めてもいいよ。君なら。」
なんてクサイことやってんだろう僕は。
だけれど、不思議と
恥ずかしさはなかった。
「金はないけど…フェリー乗りに行こうよ」
「…………ほんとに、いい、の?」
目を泳がせて困惑する彼女の手を
強く握った。
「いいよ。」
彼女は照れたように笑う。
「バカだね」
君は、本当の僕を知らない。
「ああ、世界一のバカだよ」
僕はバカだから、
人生に追い詰められたとき
死ぬ以外の方法を知らない。
僕らは車に乗り込んだ。