密かな楽しみ
毎朝。
あの女に会った時間に、
会った場所を通るようにして、
通勤しているのに、
一向に会えない。
次に会えたら、
きちんと自己紹介したいし、
できたら連絡先の交換もしたい。
すれ違い様に、
真顔で俺を見上げた瞳は琥珀色。
端正な顔立ちと
染めていない黒髪は
少し癖があるベリーショート。
華奢でほっそりとした身体。
なのに、
周りを圧倒する存在感を放つ女。
一度しか見ていないのに、
瞼の裏に焼き付いて離れない。
年齢も俺と変わらないぐらいだろう。
なぜだかはわからないが、
必ず、もう一度会えると、
確信していた。
毎朝、会った場所で、
無意識に探してしまっている。
あの女に会えるのを、密かに楽しみにしている。