Betrayer-ビトレイヤー-~嘘に包まれた気高き彼女~
パッと見、このクラスの中では、群を抜いて整った顔の男……。
開いていた、すぐ隣の窓から吹き抜く夏風が、彼の長めの前髪をサラサラと揺らしている。
そこから切れ長の美しい、驚いたような目が私へと向けられていた。
その顔を、声を……私はこれまで一度たりとも、忘れたことはなかった。
「久しぶり、亮」
クラス内が、ザワザワと騒がしくなる。
「なんだ、黒間……久邪美さんと知り合いか?」
担任の先生が驚いたように、私と亮の顔を交互に見渡す。
そんな先生に、私は満面の笑みを浮かべて言ってやった。
「私と亮は、昔、付き合っていたんですよ」
「「ええっ!?!?」」
私の言葉に、クラス内が瞬く間に騒然となる。
そのときだった。
―ガン……!!