Betrayer-ビトレイヤー-~嘘に包まれた気高き彼女~
「久邪美明日菜、あなたのことは全部聞いてるの。私のことを信頼して、亮が話してくれたんだもの」
「……」
「亮がこれまで、あなたごときの最低な人間にどれだけ傷ついたか……あなたにはわからないでしょ?」
手のひらをギュッと握る。それはもう、血が滲むほどに……
確かに私は亮を裏切った。
―『ごめんね、亮。私今日から、この人と付き合うことになったから』
亮ではない、違う人を選んだあの日。
―『明日菜、なに言って……』
決して、それは本望ではなかった。全部、あいつに言わされた自作自演の言葉……
だけど、亮からしてみれば、完璧な裏切り……。
千鶴の手が……再び亮の手を握り締める。
「あなたにはもう、亮に触れる権利も、そばにいる権利もない。だけど……私は違う」
強い意志の籠ったような……力強く、それでも綺麗な瞳が私を射抜く。