*僕らの軌跡*
ようやく子猫を捕まえた私は よかったよかったと安心していた
トラックが まだ走ってくるのに気づかず
「聖菜 逃げろ!」というお兄ちゃんの声に
はっとして振り返った時は もう遅かった
気づいたら さっきまで歩いていた道が上の方にみえて
私は 川のそばの 石ばかりのところにいた
だが、私だけではなかった ただそこにいたわけでもなかった
起き上がってみると お兄ちゃんが倒れていた
石には 赤いものが広がっていた
「深兄?ねぇ、お兄ちゃん?おきてよぉ」
私のその声は お兄ちゃんには届かず
かえってきたのは さっき助けた子猫の鳴き声だけだった