12月の恋人たち
「俺はまだ学生だし、そんなことを言う権利、多分まだないけど…でも、家族には純粋に憧れる。おやすみって当たり前みたいに言って、おはようって一日の最初に必ず顔を合わせて言う。すごく些細なことだけど、朝起きて一番最初に見る顔が理真さんだと嬉しいし、一日の終わりには理真さんの顔を見て眠りたいなぁって思う。」
「…そう、だね。っていうかそんなこと考えてたの?」
「んー…理真さんの家に泊まりに来るようになってからかな。これが続いたらなぁって。」
「…そっか、続いたら、か。」

 理真だって全く考えていなかったわけではない。ただ、日々が忙しすぎて、自分が家族をもつことを現実として考えることがあまりできなかっただけだ。そうなりたくないわけでもないし、今凜玖の話を聞けば、それが現実として訪れたら幸せだと思う。

「…理真さん、眠そうだし、そろそろ寝る?」
「え、でも早くない?凜玖くん、眠くないでしょ?」
「でも理真さんは眠い、でしょ?」
「まぁ、そうなんだけど。」
「素直でよろしい。じゃあ寝よう。お風呂も入ってるし、ちゃんと髪も乾いてるし。」

 凜玖の優しい手が理真の髪をすいた。その手に頬を寄せる。

「凜玖くんの手もすっごく安心する。」
「知ってるよ。俺は理真さんに触るといろいろしたくなっちゃって全然安心できないけど。」
「もー凜玖くんは!」
「…大丈夫、今日はしないって。」
「寝よ!」
「うん。」

 寝室までの短い距離を手を繋いで歩く。それだけでどれだけ自分が満たされているのか、多分凜玖は知らないだろう。今日はクリスマスイブ。いつもとは少し違う夜。だからこそ、伝えたい。

「…凜玖くん。」
「うん。なに?」
「…こういうのもね、好きなんだよ、私。」
「え?」
「だからね、ありがとう。」
「…不意打ちの笑顔、…寝るだけじゃ済まなくなるよ、理真さん。」
「そんなこと言って、絶対無理矢理はしないでしょ、凜玖くん。」
「…なんだろなーその安心感。いいんだか悪いんだか。」
「いいんだよ。私はそれを望んでるもん。」
「…それ言われたら弱い、かな。」

 寝室につき、ベッドに横たわる。お互いに何を言うわけでもなく、自然と向かい合い、そっと額は重なった。

「…おやすみ、凜玖くん。」
「おやすみなさい、理真さん。」

 柔らかく重なる唇にそっと瞳を閉じる。瞳を開ければ、優しく視線は絡み合った。

「…ドキドキして眠れない、かも。」
「そういうこと言うと、本当に寝せないよ?」

*fin*
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