届かぬ声を、君に。
そして、優花は何事もなかったかのように私の弁当箱から卵焼きを奪っていった。
「ちょっと、優花! 私の卵焼き......」
そう言ったときには、もう卵焼きは優花の口に消えていた。
「わぁ、舞香の卵焼き、美味しい!」
あーあ、卵焼き..........。
卵焼きを失った寂しさか、無性に響也に会いたくなった。
響也がいないと、昼休みが長く感じる。
きっと、こういう気持ちが恋っていうんだろうな.........。
私が生まれてはじめての恋に気づいたときには、寒い冬が過ぎ去り暖かい春が訪れようとしていた。