届かぬ声を、君に。
私は、立ち上がると暗くなった夜空を見つめた。
そして、この前音楽の授業で歌った曲を歌い始めた。
暗い屋上に、私の歌声だけが響く。
響也は、私のとなりに立って目を閉じていた。
いつか、響也に聴かせたいな。
私の歌を。
聴いてほしい。
私が歌い終わると、響也は小さく拍手をした。
多分、私が歌ってたことを分かってたんだと思う。
聞こえないはずなのに。
『唇の動きで、お前が言ってることが分かるんだよ』
そう、なんだ.......。
なんか、すごいな。
『お前の歌、聴いてみたいよ』
響也は、私の頭をぽんぽん、と叩いた。