届かぬ声を、君に。





「先生もね、高校生の頃吹奏楽部に入っていて、サックスをやっていたの」



「え......そうなんですか?」



はじめて知った。




「それで、舞香ちゃんみたいにコンクールで吹く曲のソロを任されたんだけど、あんまり自信がなくて......」



先生にも、そんな経験があったんだ。



「でも、任されたからにはちゃんとやろうって思って、今まで以上に練習を頑張ったのよ。だけど......」

そこで先生は、急に悲しそうな顔をした。



「コンクールの日、風邪を引いて......出たかったけど、コンクールには出れなかったの」




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