届かぬ声を、君に。
『用事が済んだから、来たんだ。間に合うかなと思ったけど......ダメだった。ごめん、舞香』
『謝ることないよ。来てくれただけで嬉しい』
私たちは、桜の木の下にあるベンチに座った。
大きな桜の木には、小さな桜のつぼみがたくさんついている。
もうすぐ、桜が咲く季節だ。
もう冬の冷たい風ではなく、春の暖かい風が吹いていた。
私は、響也の肩をつつくと一番言いたかったことを手話で伝えた。
『私、響也が好き』