守ってダーリン!
そう言って、市谷さんは私の横に置いてある紙袋を指さした。

いつの間にか倒れていた紙袋からは、透明のビニールでラッピングしたスコーンが顔をのぞかせていた。

「はい・・・前に、おいしいって言ってくれたから。」

「覚えててくれたんだ。・・・生クリーム付き?」

その質問に、私は小さく笑ってしまう。

「ふふっ・・・はい。」

「じゃあ、戻って一緒に食べようか。」

それから、市谷さんの病室に戻った私たちは、生クリームをつけながらスコーンを食べて感想を言い合う。

「ほんとだ、美味い。」

「でしょう?」

ほんのりと甘い雰囲気の中、そんなやりとりをしていると、コンコン、と病室のドアがノックされた。

「市谷さーん!邪魔しちゃ悪いですけど、いいですか?さっきの続き。」

ドアを開けたのは、先ほど消毒をしていた彼の担当看護師、小泉さんだった。

私が来ていたことを春山さんから聞いた市谷さんは、小泉さんに無理を言って、処置を中断してもらい、私を追いかけて来てくれたらしい。


(そうだったんだ・・・。)


「ものすごい必死だったので、もう、中断せざるを得なくって。」







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