守ってダーリン!
「星の坂です。」

「なら、オレの駅の2つ先だ。」

そう言うと、市谷さんは私鉄の改札に向かって歩き出す。


(一緒に行ってもいいのかな・・・。)


私が二の足を踏んでいると、市谷さんは振り向いた。

「帰るんだろ、キミも。」

「あっ・・・は、はい!」

慌てて、彼に追い付くように小走りをして横に並んだ。

そのまま、二人で歩き出す。

とはいえ。


(気まずい・・・。)


ほぼ無言で改札を抜け、ほぼ無言で電車に乗る。

何か話さなきゃ、とも思うけれど、緊張のあまり、ちょっとした話題も見つからない。

市谷さんは、相変わらずの無表情。

私だけが緊張しているようで、なんだかさみしい気持ちになる。


(ほんとにもう、龍平くんは・・・。今度、文句言わなくちゃ!!)


金曜の夜の電車は、仕事帰りのサラリーマンや飲み会帰りの人々で、車内はかなり混雑していた。

狭い空間に、雨の湿った空気が漂う。

四方八方からぎゅーっと押され、私はそのたびに身を硬くする。

目の前に見えるのは、市谷さんのダークレッドのネクタイ。




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