守ってダーリン!
「・・・あんまり、困らせることとか、変なことは言うな。」

それだけ言うと、ちょうど話しかけてきた他の男性とともに、市谷さんはその場を離れて行ってしまう。


(えっ・・・?市谷さん、行っちゃうの?)


背を向けた、彼の後ろ姿を見つめる。

私は、その市谷さんの行動に、寂しさと悲しさを感じてしまう。

「あ、すいません・・・市谷さんと話したかったですよね。」

私が市谷さんを目で追っているのに気付いたのか、岡本さんはそう言って謝る。

「いえ・・・ごめんなさい、そういうわけじゃ・・・。」

肯定するわけにもいかず、私はなんとか言葉を濁す。

そこへ、アルコールが回ってご機嫌な様子の男性がやってきて、「おっ」と言いながら岡本さんの肩に腕をまわした。

「岡本ー、市谷の彼女と、ツーショットはまずいんじゃないのー?」

反対の手で、岡本さんの頭をグシャグシャとかき回す。

「いや、市谷さんの許可、とってますから。」

「へえー。そうなのか。まあ、市谷の彼女なんて、オレもかなり興味あるけど。」

覗き込むようにジロジロと見られ、私は身体を小さくするように下を向く。

「市谷」と呼び捨てにするということは、同期か・・・先輩だろうか。

年齢的には同じくらいに見えるけれど。

大きな体と余裕のある態度に、必要以上の威圧感を覚えた私は、この場を逃げ出したい気分になってしまう。

< 160 / 330 >

この作品をシェア

pagetop