守ってダーリン!
市谷さんに声を掛けようか、そんなことも考えるけれど、今日初めて会った・・・しかもちょっとクールな人に、いきなり助けを求めるなんて、結構勇気がいることで。

ましてや、大声で「チカンです!」なんて叫ぶ勇気は私にはない。

それでも、不快感は増す一方で、私はぶるりと肩を震わせた。

その瞬間。

「ちょっと、次で降りてもらえますか?」


(えっ・・・?)


その声にはっとして真上を見上げると、市谷さんが私の横に立っていた50代位のオジサンの手首を、高々とひねりあげていた。

「・・・!な、なんだアンタはっ!!」

オジサンは焦ったように手首を下げようと抗議する。

けれど、市谷さんにつかまれた腕は、びくりとも動かない。

「警察ですよ。」

市谷さんが淡々と告げる。

その落ち着きと力強さから、本物の警察だと感じたらしいオジサンは、一瞬で顔が青ざめた。

「キミも。次で一緒に降りて。」

事の成り行きを見ているだけで精一杯だった私は、その言葉が自分に向けられたものだと気づくのに、しばらく時間がかかってしまった。



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