守ってダーリン!
「本当に!わざとじゃないんです!!」

駅員室に入った私と市谷さんは、先ほどから、オジサンの言い訳を延々と聞いていた。

ごくごく普通のサラリーマンという出で立ち。

この人が犯人かと思うと、恐怖と不快感で身震いする。

「もう、言い訳はいいですよ。

間もなく担当の警察が来ますから、その警官に聞かれたことだけ答えてください。」

「いや、でも聞いてください・・・!」

再び言い訳が始まろうとした時、駅員室のドアがガチャリと開いた。

「おつかれさまです。」

警官の制服を着たいかつい男性二人が、駅員室の中へと入ってきた。

「申し訳ありません。プライベートの時間に。」

市谷さんを見るなり、二人がぺこりと頭を下げる。

それを、「いや」と軽く受け流すと、市谷さんは状況を説明しはじめた。

その、落ち着いて理路整然と話す姿に、私は少しドキッとする。

電車で助けてもらったとき。

市谷さんが正義のヒーローのように、私の目には映ってしまった。

今もそんな気持ちのまま、見とれるように彼のことを見てしまう。

説明を終えた市谷さんは、「行こう」と言って、私と一緒に駅員室の外に出た。



< 19 / 330 >

この作品をシェア

pagetop