守ってダーリン!
扉を閉めた彼は、一度小さくため息をつく。

「あ、あの・・・。」

「ありがとうございました」そう、言おうとしたけれど。

「キミも。黙っていたらダメだろう。」

私がお礼を言う間もなく、彼は怒ったような顔で私を見る。

「キミみたいに黙っていたら、向こうの思うつぼだ。

ああいうときは、きちんと声をあげないといけない。」

教師が生徒を注意するような口調。

正義のヒーローは、厳しい先生に変化した。

「それは・・・。」

もちろんそうしたいし、そうできればいいんだろうけど・・・。

人ごみの中で、「チカンです!」なんて声を出すことは、結構勇気のいることで。

「何言ってるんだ!」って、逆切れされることもあるって聞くし・・・。

「オレが気づかなければ、キミはあのままずっと我慢してるつもりだったのか?」

責められるように言われ、私はぎゅっと唇を噛む。

毅然とした態度を取る。

それはやっぱり、わかっていても簡単ではない。

でも・・・。

黙っていたことで、助けてもらうまでチカンはそのままだったわけだし、市谷さんに迷惑をかけてしまったのも確かに事実。


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