守ってダーリン!
「上手く言えないんですけど・・・なんていうか、市谷さんの家だと甘えちゃうんです。気持ちが。」

「・・・そうか。まあ、寂しいけど仕方ないな。」

そう言って私の頭にポン、と手を載せると、彼はアクセルを踏み込んだ。

窓の外には、海に浮かんだ島のように、夜景がぽっかりと広がっていた。

前を走る車のブレーキランプが、ぼんやりと光ってやけにキレイに目に映る。

「ああ、そうだ。」

渋滞に差し掛かると、速度をゆるめた市谷さんが思い出したように呟いた。

「兄貴が、また家に遊びに来いって言ってた。翔たちが、里佳に会いたいってうるさいらしい。」

「わ!本当ですか。はい、ぜひ!」

翔くんと陸くんに懐いてもらえたのがうれしくて、私は笑顔で返事する。

「・・・させるなよ、キス。」

翔くんのことを言っているのだろう、市谷さんは一瞬私に視線を向けると、真剣な顔で呟いた。

「・・・がんばります・・・。」

次におじゃまするときも、前回と同じ愛情表現をしてくれるかはわからないけれど、今度キスを受けてしまったら、翔くんの身が心配だ。


(でも、市谷さんにヤキモチ焼いてもらえるのは、やっぱりうれしいな。)


そんなことを考えて、私は秘かに頬をゆるます。

「里佳のお姉さんは、元気?」

「あ、はい。相変わらず元気で・・・って、そうだ!お姉ちゃん、結婚が決まったんです。」
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