守ってダーリン！
「あ、そこです。その・・・角のマンション。」

それから、道案内以外はほぼ無言状態だった車内。

フロントガラスから自宅が見えると、沈黙を打ち破るように、私は市谷さんに右斜め前を指さした。

「・・・一人暮らし？」

「いえ。姉と一緒に住んでます。」

「そう。なら、少しは安心だけど。」

話しながら、車をマンションの入り口に停めると、彼はハザードランプを点滅させる。

「ありがとうございました。」

シートベルトを外して車から降りようとした私を、市谷さんは「ちょっと」と言って引き留める。

「はい？」

「また・・・気を悪くしたら申し訳ないけど。

キミみたいなタイプは狙われやすい。

電車もだけど、他にも、いろいろ気を付けたほうがいい。」

刑事さんらしい物言い。

単なる一般人に対する忠告なんだろうけど、至近距離で真剣なまなざしを向けられると、思わずドキドキしてしまう。

私はぱっと視線を外し、なんとか鼓動を落ち着かせる。

「はい・・・わかりました。ありがとうございました。」

もう一度お礼を言うと、助手席のドアを開いて外に出る。

「それじゃあ・・・また。」

ドアを閉める瞬間、何気なく、そう呟いてしまったけれど。


（わ・・・！「また」、なんて言ってしまった。）
　

もちろん深い意味はないけれど。

ちょっと気安かったかな、と心配になってチラリと市谷さんを見る。

暗い車内に見える横顔は、相変わらずの無表情。

彼は私の言葉を聞き流すように、軽く会釈をすると、そのまま車を走らせた。


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