守ってダーリン!
それから数週間後。

街中では、日傘の花が咲きはじめた。

「私の両親に挨拶をする」という大仕事を無事に終えた市谷さんは、願掛けのように断っていた、スイーツたちを解禁した。

そして今度は。

私が彼の実家を訪れる日が、ついに・・・ついにやってきた。

昨日はあまり眠れなかったけれど、緊張し過ぎているせいか、いまも全く眠くない。

飛行機で2時間ほどかかる彼の実家は、私が行きたいと思っていた北国で、空港に降り立った瞬間、凛とした空気に包まれた。

空港から約20分、私と市谷さんを乗せたタクシーは、彼の実家へと向かって走る。

車の中から見る初夏の景色は、絵に描いたような美しさだ。

「緊張してる?」

「・・・はい。」

キレイな景色を眺めながら、私は冷汗をかくぐらいの緊張感に襲われていた。

市谷さん一家は、彼と卓哉さんだけでなく、お父さんもお母さんも警察官だと聞いている。

さぞ厳格なご両親なのではと、私はかなりドキドキしていた。

「親父はあんまり話さないし、ぱっと見怖いかもしれないけど、いつもそんな感じだから気にしないで。」

「はい・・・。」

「母さんは、警察で働いてたっていっても、兄貴が生まれる前の話だ。

それに、ドラマに出てくるような、カッコいい婦警っていうタイプじゃない。

そうだな・・・オレが親父似で、兄貴が母親に似た感じかな。

明るい・・・っていうか、うるさいぐらい。」

そう言うと、うつむく私の右手を、包み込むようにきゅっと握る。

その感触に顔を上げると、市谷さんは安心させるように、私に優しく笑いかけた。
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