守ってダーリン!
「そんなの、気い遣うに決まってるだろ。」

市谷さんの言葉に、私は心の中で「うんうん」と大きく頷く。

「そんなの、使わなくて大丈夫よ。」

「母さんがそう思っても、里佳は使う。」

「えー、大丈夫よお。里佳ちゃんともっとお話したいし・・・。」

市谷さんとお母さんの会話の行方を、私はドキドキと見守り続ける。

そこへ、お父さんの鶴の一声。

「泊まる準備もしてきてないだろう。

飛行機の切符だって手配してあるだろうし。また、今度二人でゆっくり来てもらえばいいじゃないか。」

説得力のある言葉に、お母さんはしばらく「うーん」と唸っていたけれど、最後は「そうね」と言ってお父さんの案に納得をしてくれた。


(よ、よかった・・・!)


私は、心底ほっとしてしまう。

いいご両親とはいえ、いきなり彼の実家にひとりで泊まるなんて、私の胃に、無数の穴がポコポコと開いてしまうところだった。


(でも・・・なんかいい感じだな。)


ほっとした私は、意見が一致して頷き合うご両親の顔を見る。

いつもはお母さんで、締めるところはお父さん。

二人のやりとりに、私はぼんやりと理想の夫婦像を思い描いた。


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