守ってダーリン!
8.新しい日常
デパートのショウウインドウに、秋色の装いをしたマネキンがずらりと並ぶ。

まだまだ外は暑いけれど、夏の終わりの気配を感じた。

「7 luxe」では、キッチンスタッフが秋メニューの試作を繰り返し、私も、かぼちゃを練り込んだスコーンを、季節ものとしてお店に出す予定になっている。

玲奈はまだ産休中だけれど、龍一くんを連れてちょこちょこお店に顔を出しては、「授乳中はお腹がすくの」と、大盛りのランチセットとデザートを、一人でペロリと平らげている。

龍一くんはその間、玲奈に抱っこされたりおんぶされたり、時にはお店のスタッフと戯れながら、いつもご機嫌に過ごしていた。

生まれたては、壊れそうで、ふにゃふにゃしていた龍一くん。

そんな龍一くんを、玲奈は不安そうに抱いていた。

けれど今は。

腕も足もぷくぷくとしてきた彼を、玲奈はすっかりお母さんの顔になって、慣れた手つきで抱いている。


(もうすぐ、秋だもんね・・・。)


着実に、流れる時間。

それは、玲奈をママに、龍平くんをパパに、そして二人と龍一くんとの絆を、いまよりもっと深いものへと変えていく。

そして。

それは、私と市谷さんの間にも。

ゆっくりと、でも確実に、積み重ねてきた二人の時間。

そのかけがえのない思い出は、もうすぐ、ひとつの未来に繋がろうとしていた。
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