守ってダーリン!
いまだショックから抜けきれない私に、「かわいかったから気にするな」と笑いながら言うと、市谷さんはカバンを手に玄関へ向かう。


(うう・・・明日は、絶対早起きしてきちんと朝食用意しよう・・・。)


そう決意した私は、気持ちを切り替え、慌てて彼の後を追う。

黒い革靴を履き終えると、市谷さんは私の方へ向き直る。

「戸締り、ちゃんとするんだぞ。」

「はい。」

「怪しい訪問販売とか、気を付けろよ。」

「ふふっ、はい。」


(もう・・・心配性なんだから。)


くすぐったい気持ちで彼を見上げると、私は「ん?」と言って首を傾げる。

「市谷さん。ちょっと、ネクタイ曲がってますよ。」

位置を直そうと彼の首元に手を伸ばすと、市谷さんは私の手首をきゅっとつかんだ。

「その『市谷さん』っていうの、そろそろやめないか?」

「え?」

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