守ってダーリン!
「里佳も市谷になったんだし。下の名前で呼んで。」

甘い瞳で見下ろされ、頬がぽっと火照ってしまった。


(でも・・・そっか・・・そうだよね。)


「じゃあ・・・直哉、さん。」

意を決して、彼の名前を呼ぶけれど。

「呼び捨てでいいよ。」

「え、でも・・・。」

それは結構、ハードルが高い。

そう思って口に出すのをためらう私を、彼は期待の眼差しでじっと見つめる。


(どうしよう・・・いきなりそんな、呼びにくいよ。)


けれど、彼の視線に負けた私は、もう一度チャレンジ。

「直哉・・・・・・くん。」

やっぱり呼び捨ては出来なくて、最後に『くん』をつけてしまった。

市谷さんは、それを無言で却下する。


(うーん・・・どうしよう・・・。)


しばしの間悩んだ私は、突然頭にピン!ときた。

「なおくん!」

今度は、ためらいなく彼を呼ぶ。

けれど。

「・・・ないだろ、それは。」

市谷さんは思いっきり不機嫌そうな顔をする。

「うちのお姉ちゃんも、彼氏のことカズくんって呼んでるんです。」

「・・・だからって。お姉さんの彼氏はそうでも、オレはそんな呼び方されるような顔じゃない。」
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