守ってダーリン!
ホールには、伊佐子さんか千穂ちゃんがいるはずだ。

私は、直くんがわざわざ席を立ち上がり、レジまで声をかけにきたことに、とてもとても驚いた。

「あ・・・えっと、じゃあ、伊佐子さんか千穂ちゃんに・・・」

レジ接客中の私は、そう言って他のスタッフに頼むように促すけれど。

「里佳に、淹れてもらいたいから」

「!」

それだけ言うと、直くんは怖い顔のまま踵を返す。


(お客さんの前で、あんなことを言うなんて・・・)


私は、かけられた言葉と、彼のとった行動に驚いて、一気に顔が熱くなる。

「・・・彼氏?」

直くんとのやりとりを黙って見ていた狩野さんは、気まずそうに私に尋ねた。

「いえ・・・主人です」

「・・・えっ!?」

「彼氏」だと、そんなに照れずに言えるのに。

「主人」と口に出すことは、どうしてもまだ慣れなくて、恥ずかしさを感じてしまう。

「・・・結婚、してたんだ・・・」

狩野さんが、額をかきながらポツリと呟く。

「はい・・・」

私もなんとなく気まずくて、お釣りに出した50円玉を、手渡しではなくトレーにのせた。
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