守ってダーリン!
狩野さんはそれを「そっか」と言って手に取ると、自嘲するようにふっと笑った。

「いや・・・僕も、ちゃんと確認しておけばよかったな。

独身だって、勝手に思い込んでたから」

「じゃあ」と言って右手をあげると、狩野さんは軽く会釈をしてそのまま店を出ていった。


(・・・びっくりした・・・)


狩野さんに、食事に誘われたことはもちろんだけど。

直くんが取った行動に、私はとても驚いていた。


(でも、あんなことをするってことは・・・)


私は、ドキドキしながら、お替わりのコーヒーを届けに直くんの元へ急いで向かった。

すると、目の前には、予想通りの彼の姿。


(う・・・やっぱり、めちゃくちゃ怒ってる・・・)


読みかけの本は閉じられたまま。

腕と脚を組んで、椅子の背もたれに寄りかかっている彼は、ものすごく不機嫌な表情でじっとテーブルを睨んでいた。

「・・・お待たせしました・・・」

緊張しながらコーヒーを置くと、直くんはこちらを振り向き鋭い視線を私に向けた。

「・・・さっきの客。名札つけてないのに、なんで里佳の名前知ってるんだ」

低い声で問われると、責められているとしか思えずに、私はおずおず口を開く。
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