守ってダーリン!
「『7 luxe』を載せてもらった雑誌の、出版社の人なんです。

取材の時、少し話したりもしたから・・・」

知り合いであることを告げると、直くんはさらに顔をむっとさせる。

「情報誌の取材先なんて、数えきれないほどあるだろう。

店のスタッフの名前なんて、いちいち覚えてないはずだ」

「そう、言われても・・・」

「指輪も。なんでしてないんだ」

そう言って、直くんは私の左手に視線を移した。

「スコーンも作るし、キッチン仕事も結構あるので・・・。

あの婚約指輪は、仕事中はさすがにちょっとできないですよ」

直くんが、私に贈ってくれた婚約指輪。

まさに「給料の3か月分」ではないかと思われるその婚約指輪は、真ん中に大粒ダイヤがキラリと輝き、その両脇には小粒のダイヤが飾られた、とても素敵なデザインだ。

もらったときは本当に本当にうれしくて、指輪をはめた薬指を、一日中眺めてはにやにやしていた私だけれど。

調理作業を行う仕事中につけることは、さすがにちょっとはばかられた。


(仕事以外で出かけるときは必ず指につけてるけど・・・。職場で、取ったりはめたりしたくないし・・・)




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