守ってダーリン!
いつも、「キミ」って呼ばれていたから。

ただ、それだけのことなのに。

市谷さんの中で自分の存在が認められた気がして、それだけで・・・私の胸は、ときめいた。

そのまま、囚われたように動かない私に、市谷さんは声をかける。

「・・・ありがとう。」


(!!)


照れたように。

いつもより穏やかな顔をして、そんなことを言うから。

この瞬間。

市谷さんは、私のココロの全てを、完全に支配してしまった。

「い、いえっ・・・。」

ドキドキする胸を抑えて、なんとか言葉を絞り出す。

頬が熱い。

抑えたはずの胸は、すぐにまたトクントクンと音を立てて止まらない。

私はもう一度頭を下げると、市谷さんの顔も見ず、そのまま家を後にした。


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