守ってダーリン!
市谷さんが連れて来てくれたのは、駅から5分ほど歩いた場所にある、こじんまりとした焼き鳥バー。

広めのカウンターが6席と、4人掛けのテーブルが3つほど。

店員さんは全員男性で、皆、小奇麗な顔をしている。

薄暗い店内はおしゃれな雰囲気で、いわゆる「焼き鳥屋さん」のイメージとはだいぶかけ離れた印象を受ける。

市谷さんが店員に名前を告げると、一番奥のカウンター席へと案内された。

これで、店内は満員だ。

市谷さんはビールと私のカクテルと、料理を適当に注文してくれる。

「はじめに聞けばよかったんだけど。

里佳さんを連れてこれる店って、ここくらいしか知らなくて。

鶏肉、苦手じゃなかった?」

左から聞こえる、至近距離の彼の声。

それだけで、私はドキドキと落ち着かない。

「はい。好き嫌い、ほとんどないので・・・。」

「そうか。なら、いいんだけど。」

そう言うと、市谷さんは口をつぐむ。


(カウンター席でよかった。)


向かい合わせの席だったら、恐らく私は前を見れない。

シーンとしてしまった二人の間に、ちょうどよく飲み物が運ばれてきた。

「じゃあ、とりあえず。」

< 66 / 330 >

この作品をシェア

pagetop