守ってダーリン!
市谷さんがグラスを持ったので、私も慌てて手を伸ばす。

カチン、とグラスを合わせると、それぞれお酒を口に運ぶ。


(どうしよう・・・何か、話さないと・・・。)


グラスを握りしめたまま悩んでいると、小さく咳払いをした市谷さんが、呟くように話を切り出す。

「・・・この前はありがとう。すごく、助かった。」

無表情ではないけれど、硬い印象のまま、彼は私に視線を向ける。

ドキン、と胸を鳴らしてから、私はグラスをテーブルに置いた。

「いえ・・・。よかったです、元気になって。」

「里佳さんにうつってないか心配だったんだけど。大丈夫だった?」

「あ!私、意外と丈夫なんですよ。風邪も滅多にひきません。」

私が答えると、市谷さんは「そうか」と言って少しだけ顔が穏やかになる。

その、彼の表情に、ほんのり心は温かくなるけれど。

また、沈黙・・・。

目の前に届いたねぎまの串を、「いただきます」と言ってとりあえず頬張る。

緊張してても、おいしいものはやっぱりおいしい。


(・・・。)


何か話さなきゃ、と焦った私は、看病に行った日の話題をなんとかつなげる。


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