守ってダーリン!
外を彩る楓の葉が、オレンジや黄色に染まっている。

早上がりの勤務を終えた私は、市谷さんの家の最寄り駅に向かっていた。

待ち合わせ場所は、駅改札を出てすぐのカフェ。

今日は、市谷さんが居酒屋に連れて行ってくれる約束の日。

金曜の夜だから、混んでいるかもしれないと言っていたけど。


(楽しみだな。)


帰り際、立て続けに来たお客さんの対応で遅くなり、メイクは簡単にしか直せなかったけれど、朝からつけまつげをつけておいたので、いつもの私よりかは幾分華やかな・・・はず。

カフェに入るとすぐに、壁際のカウンター席に座っている市谷さんが目に入った。

今日は休みだと言っていた市谷さん。

カジュアルな紺のジャケットを着た後ろ姿は、やっぱり変わらずかっこいい。

「ごめんなさい、遅くなって。」

左斜め後ろから、その背中に声をかける。

振り向いた市谷さんは、私と目が合った途端、やわらかく微笑んでくれた。

それだけで。

私は胸を高鳴らせながら、足元から、とろけそうになっていく。

「いや、全然。本読んでたし。

走ってきた?・・・息切らして。」

席を立った市谷さんは、私の顔を覗きこむ。

「・・・!ほ、ほんの少しです・・・。」

「そう?ならいいけど。無理しないでいいから。

・・・鼻も、赤いし。」

市谷さんが笑う。

そして私の頭に手をのせると、「行こう」と言って歩き出した。
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