another way【完】
なんとなく宙ぶらりんのまま
私も小説家としての連載を続け、
娘は志望校合格のために塾へ通い、
彼からは私の不安定な収入でも
今までと変わらない生活のできる額の
養育費が送られていた。
受験を直前に控え、
学校の雰囲気もピリピリしているのだろう
そこに加え、親の離婚が決まって
美紘は言葉を飲み込むようになっていた。
「美紘、ご飯できたよ」
「あ、うん…これやったらいく…」
「勉強、頑張ってるのね。
でも、頭の休憩も大事だから
無理しないようにね」
「……うん…あ、お母さん」
「なに?」
「いや、やっぱりなんでもない…」
私自身、聞いてもいいのか怖くて、
深く問い詰めることはできなかった。
「…そう、なにかあったら言ってね」
「…うん、ありがとう…」
ほんとに当たり障りのない言葉だと思う。
きっと、
この子のタイミングで言ってくれるだろう
そう信じて私からは何も言わなかった。
それが、優しさだと思っていた。
けど、美紘には違ったみたいで、
余計に彼女を
悩ませてしまっていたことを知ったのは
学校から、
「体育の授業中に娘さんが倒れました」
という電話がきた後だった。