博士と渚くん
お兄さんの婚約者③
「ど、どうしたの?」
痛いくらいの力で掴まれる手。こんなの初めて。
「博士…笑わないで」
「え?」
油断した瞬間。
渚くんの手によって床に押し倒された。
下が絨毯なのが救い。背中の痛みはまだましだろう。いや、十分痛いけどね。
「痛…」
痛みに顔をしかめながら、私を見下ろす渚くんを見た。何を考えているのだろうか。
渚くんは、悔しいような情けないような悲しいような寂しいような、そんなよくわからない表情をしていた。